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 上野学園 石橋メモリアルホールに勤務する畠山すみれさん。
 若さ・フレッシュ感と気配りの行き届いた落ち着きある優しさや包容力を併せ持ち、新しいことに物怖じしない好奇心と、和をイメージするクラシカル感、そして未来を見据える強い眼差しが印象的です。一般的・社会的な評価に左右されない、自身の価値観を確立されているように感じます。常に同じ目線に立って他者を尊重しようとする姿勢は魅力溢れるもので、今回は私たちにとって原点を見つめ直す良い機会となりました。
  (インタビュー:2015年1月18日) -文・構成・写真= 蓑島晋・畑中洋子(シン・ムジカ)-




■出会いとお互いの印象
― 最初にお会いしたのは2011年11月東京文化会館 (画像:右)です。かねてから交流のあった井坂仁志さん ※1 から急なお仕事の依頼を頂き、気合いを入れて上野に向かいました。その時に集まったメンバーのお一人が畠山さんでした。7時半から夜までの現場で一緒に仕事をさせていただきましたが、当日はあまりお話できず、お互いのことを良く知らないままでした。

畠山すみれ(以下「畠山」)  懐かしいですね。当時は、石橋メモリアルホールで井坂さんのお手伝いをしていました。
 私の蓑島さんの印象としては、当日はゆっくりお話できませんでしたが、差し入れた北海道の『じゃがいもコロコロ』というお菓子を美味しいって食べてくれて、素直でいい人だなと思いました。それを側で見ている(畑中)洋子さんもすごくいいなあって。お二人で演奏会運営などのお仕事をしているとお聞きし、どのような仕事をしているのかすごく興味を持ちました。その後、お声掛けいただいて一緒に仕事をする機会に恵まれ、感謝しています。

― 最初に依頼したのは2012年9月王子ホール『英国歌曲展』の受付スタッフでした。初めての現場やスタッフ陣とでも臆せずに動ける人、そして何より演奏者様の大切なお客様に対して自然な配慮ができる人、そういう人を探して畠山さんが思い浮かびました。その頃受付のスタッフさんを見る中で、出演者様への気遣いが過剰でお客様への対応がおろそかになってしまう方や、ご自身は完璧にお仕事をされていながらチームワークがぎこちなく、やはりお客様への気配りに影響する場面で残念に思うことがありました。たった一度お会いしたきりの畠山さんでしたが、安心してお任せできる気がしました。快諾くださって嬉しかったです。その際に、王子ホールでレセプショニストのアルバイトをしていたことがあったと聞いて驚きました。知らずにお願いしたので。一緒に仕事をして、接客はもちろん、責任感ある仕事ぶりに感銘を受けました。以来とても頼りにしています。そして周囲に左右されない独自の価値観をお持ちだということ、ビリビリ感じます。

畠山  私としても、一緒に仕事をさせていただく中でお二人はすごくハートが「強いな」と感じています。やさしい印象で隠していますよね。また、出演者からの信頼が厚くてすばらしいと思います。

― ありがたいことです。自分がこれはと思う音楽のために誠実に素直に取り組んでいくことを心掛けています。器用にできないからやるしかない。畑中は経験を積んできましたが、音楽に詳しいということはありません。

畠山  私もそうです。

― そういう人の方が冷静に、演奏以外のことに目を配れるということがありますね。

畠山  ええ、そう思います。

― 音楽やお芝居が好きだという理由だけでは、難しい面があると思います。アーティストとは違うことを忘れてしまいがちになる。

畠山  そういうこともありますね。スタッフよりも、アーティストの方が周りの空気や状況を読んでしっかり動けてしまう、そういう様子を目にしてしまうことがあって、それでは役割が違うのにと、昨日ホールの大先輩も嘆いていました。

― コンサート制作の構造をアーティストの方が良くわかっていて、音楽家だけで仕事をした方がいいとなってしまうと、私たちみたいな役割は必要なくなってしまいます。



■レセプショニストの仕事とその魅力
― 弊社の依頼では公演の受付・レセプショニストをお願いすることが多いですが、仕事内容についてどのようなイメージをお持ちですか。

畠山  チケットテイク、クローク、座席案内、そして緊急時の避難誘導や怪我などの応急処置の対応などですね。瞬時の判断と、コミュニケーション能力はとても大切で、それが魅力だと思います。素質も必要ですよね。

― お好きな仕事でしょうか。楽しいですか。

畠山  楽しいです。特にチケットもぎりが。お客様が「演奏会に行こう!」といらして、最初に出会う人じゃないですか。気持ちよく入場して欲しいなと思うのと、お客様のワクワク感が伝わってくるのですごく楽しいです。「演奏会を楽しみに来た」というお客様の気持ちに触れられる気がして幸せになります。

― そうしたご意見は初めて聞きます。チケットを切る作業が好きなのかと思ったのに(笑)。お客様の気持ちに負けてない、一緒にワクワクしていますね。

畠山  切るのも楽しいですけど(笑)、私もすごくワクワクします。いつも「いってらっしゃい」「楽しんでください」って思って出迎えています。お客様が楽しみにホールに入っていく姿を見るのがとても好きです。

― 仕事を楽しんでいる。気をつけていることはありますか。

畠山  笑顔に気をつけています。口角を上げることは難しいです。入口が明るい雰囲気のほうが気持ちよく感じていただけると思っています。色々な場面があり、笑顔で対応するわけにはいかないこともありますが。他には、舞台裏に迷惑がかからないようにとても気をつけています。開演時間に間に合うようにお客様に入場していただくことが、一番緊張します。予定通り進行できるように。曲間の入場も緊張しますね。

― 舞台側では、設営からリハーサルを終え、出演者様にベストのコンディションを整えていただきつつ、開演に向けての最終チェックをしています。出演者様の気持ちが高まってくるのが伝わってきて、こちらも気持ちよく緊張しています。そして、ホールの外・受付ロビー・客席内でのお客様の様子に、受付スタッフ同様に気を配っています。舞台裏と受付の連絡体制はとても重要ですね。コンサートをスムーズに進行するには、舞台裏のステージマネージャーと、受付のレセプショニストが常に連携しお互いの状況を理解し合うことが必要ですが、その関係性についてはどのように考えますか。

畠山  演奏会当日、舞台裏からはモニタで受付の様子を確認できますが、ロビーから舞台裏は見えないので、まずは時間内にお客様を座席にご案内することに注力します。開演直前は受付に主導権のあることが多いかもしれません。ステージマネージャーから「開演時間は予定通りでいいですか?」と聞かれることが多いです。開演して休憩後は舞台裏のタイミングで進行をお任せします。その時々の状況に応じた判断が最初は難しくて、いつ扉を閉めるのかというのも迷いました。連携は大切です。演奏会が始まってから遅れていらしたお客様を案内するタイミングも、予め舞台裏と打ち合せしています。

― 畠山さんの最初の印象に付け加えて、場面や状況に応じて冷静に判断して対応されていると感じます。一人で判断することを恐れる人は多いと思いますが、畠山さんは周囲の環境に関わらず十分に自分を活かすことができる人だと思います。

畠山  そう言ってくださってありがたいです。表方、受付側では個人で判断することがとても多いですよね。体調を崩された方や怪我をされた方の対応はもちろんですが、困っている方の理由はそれぞれに違います。全てに気付いていられるようにしているけど、全てに手は貸さないようにしています。お節介になるので、本当に困ったという状況になるまでは空気に徹しようと思っていて。「気付いている」「わかっている」ということがとても大切だと思っています。それから、一つのことに気持ちが集中しないように気をつけています。

― お客様に関することは予測できないことが多いですね。話は変わって、レセプショニストの魅力は何だと思いますか。ご自身が感じるホール職員としての魅力でも結構です。

畠山  お客様に喜んでいただいた時に、やりがいを感じます。以前、お身体の不自由なお客様がいらした時にお手伝いさせていただいたのですが、「何も心配することなく聴けてよかった。また来たい。」とお手紙をいただいた時はとても嬉しかったです。お客様からお手紙を直接いただく機会が多くて、それを励みに「また頑張ろう」と思います。

― それは醍醐味ですね。そして前向きですばらしい、見習いたいと思います。人と接することが好きですか。

畠山  はい、好きです。



■上野学園 石橋メモリアルホールに勤めるまで
― 話は前後しますが、今の仕事に就くことになった経緯を教えてください。レセプショニストの仕事を希望されていたのですか。

畠山  大学卒業後、洗足音楽大学の邦楽研究所で土曜日のみの授業を受けていたのですが、平日は空いているので王子ホールのアテンダント(レセプショニスト)のアルバイトを始めました。就職は追々探そうと思っていました。レセプショニストの仕事を探していたわけではありませんが、音楽も好きだからやってみようというくらいの感覚でした。本当は画廊の受付をやりたかったのですが、都内の画廊は求人が出ていなくて、電話してもないと言われました。

― 偶然レセプショニストの求人を見つけたということですね、競争率が高いのではないかと想像しますが。

畠山  求人が4月初めに一度だけ出るそうです。応募が200人くらいだと聞きました。まさか受かるとは思っていなくて。王子ホールは本当に偶然、良いタイミングで仕事が見つかったのですが、その後の2010年9月から井坂さんに「空いている時間でいいから来て」と呼ばれたのが始まりで、演奏会のある日に石橋メモリアルホールでもアルバイトをするようになりました。そのうち演奏会の無い日にも呼ばれるようになって、王子ホールに行けなくなってしまい、申し訳ないですけど辞めなくてはならなくなりました。

― 石橋メモリアルホールでは、最初はどのようなお仕事でしたか。

畠山  一番初めに頼まれた仕事は、搬入口のチェックでした。人生で初めてホールの搬入口から入ると、通路で井坂さんが郵送物のシールを貼っていて、その時が初対面でした。たしか演奏会の日で、「ここに座っていればいいから」と言われ、搬入口で入館者(出演者)対応をしました。でも出演者の顔も名前も分からなくて。

― 出演者に接するのは、緊張しませんでしたか。

畠山  誰だかわからないので緊張しませんでした。出演者もスタッフも、皆さん同じように対応させていただきました。

― 知らないから誰でも同じ。それはいいですね。

畠山  開館 ※2 当時、私のような未経験者を入れてしまうところが、今考えれば驚きでした。私以外は、音楽大学出身者や業界を経験している人だけでしたから。2年間アルバイトを経験し、正社員に採用していただきました。

― 目標にしていた仕事というよりも、自然にそうなったということですね。仕事は楽しいですか。

畠山  目指してきたわけではないので不思議です。ホール業務は楽しいです。コンサートに携わることは楽しいですね。

― 現在の仕事内容を聞かせてください。

畠山  主に、一般利用公演(貸し館)を担当しています。公演ごとに個性があるので、スムーズに対応できるように連携する仕事です。主催者様によって注意点や特徴があるので、客層・入場者数・ご招待・スケジュール・照明・舞台配置・録音録画などを次回に活かせるように記録しています。それから、利用者様への年賀状に演奏会の素敵だったところ、感動したところを書けるようにメモで残しています。以前は注意点しかメモに書いてなかったので反省しているところです。



■ホールでの仕事で思うこと、不思議なこと
畠山  ホールの受付業務は二人で、どちらかが出勤しているという状況です。それで、私の業務をマニュアル化するために一生懸命書いて作っていますが難しいです。

― 誰が就いても基本的なことは出来るように標準化するということ、永遠のテーマだと思います。とくに利用者様にとっては重大なことですね。

畠山  去年と同じでとか、いつもはこうだとか、誰でも同じ対応ができるように、なるべく記録に残すようにしています。でも現場や場面で臨機応変に対応することもありますよね。それを何年分、どこまで残せばいいのか。長く利用してくれている団体もあるし、客層とか歴史、個性のようなものをどこまで残せばいいのだろうと、ホールとしてはとても考えます。

― ご自身ではどこまで蓄積していますか。舞台設備に関わることなどの問い合わせもあるでしょう。

畠山  舞台の広さ、楽屋や客席、備品など、答えられるところまで伝えて、それ以上は担当に確認します。ホール内のコンセントの位置や、ワット数、音響関係などの専門分野は全く分からない。把握していることもありますが、調べて折り返すことが多いです。

― ホールで働くようになって、何か気がついたことはありますか。

畠山  最近思うのは、日本のクラシック業界は伝承されている部分が多いということです。仕事の手段やノウハウはマニュアル化していないので、師匠がついて直接教えてくれるような部分。「俺の背中を見て育て」というような、独特な文化があるなと思っています。ステージマネージャーは孫弟子までいたりして。レセプショニストもマニュアルはありますが、先輩に教わることが多いです。そういったことって、多くありませんか。

― そうですね、あまり組織化されていない。時々の流れの中で教えられて覚えるような。既にできている人は判断力もあり高い能力があるけど、それを周りや部下が理解できるように説明できないこともあります。後進を育てるという場合には難しいですね。システム化するようなことが得意な人が少ないかもしれません。

畠山  いわゆる理系が少ないと思います。世の中の一般的な企業の会社員の仕事って、筋書きがあるのが当たり前じゃないですか。そういうものだと思っていたので、この業界にびっくりしたところはあります。言葉が分からない、何を指して言っているのか全く分からない、筋道立てて話してくれないということに困惑することがあります。私も筋道を立てて話すことは得意ではありませんが。「それで通じちゃうんだ」と驚くことがあります。

― コンサートの現場でも場当たり的なことがありますね。それで形成されている、何とかなってしまう。

畠山  側で見ていて、演奏会当日にちゃんとできるのか心配になることがあります。でも、何とかなってしまう。何とか終わってしまう。見直すこともなくて。あと、隣の人が何をしているのか知らないまま仕事をしてしまうことも多いです。

― やることって、意味が欲しいですね。ひとつずつ意味、根拠を理解していきたい。

畠山  その通りです、何のためにしていることなのか、分かった上で仕事がしたいので。とても難しいと思っています。暗黙のルールのようなものが存在しますよね。例えば、ステージ転換を速くきれいにするとか、出入りの回数を少なくするとか、音を立てないようにするとか。他にはチラシを挟み込むこととか、順番も。

― なるほど。業界では当たり前のことでわざわざ取り上げないけど、初めての人には説明を要する独特のルールですね。細かくは勤務先で違ったりもする。

畠山  独自の発展を遂げています。まだまだ日が浅く、今のコンサートの形を作り上げてきた方々が今も活躍されています。そういった方のお話を伺うと、独自の文化すぎて面白いです。単に西洋の真似ではなく、日本人らしく細やかに工夫してきた部分が不思議で素敵だなと思います。

― そういった興味の持ち方もありますね。ステージ上の演目だけでなく、それにまつわる全てが文化ですね。日本人ならではのこだわりや美しさもあるわけですから。

畠山  本当です。様式観。奥が深いです。



■石橋メモリアルホールの特徴
― 大学附属のホールであるということを意識することはありますか。

畠山  基本的な業務は他のホールと一緒だと思います。特徴は大学の授業で使うので、そのスケジュール管理が入ってくることです。大学の授業での使用が多いですが、先生方の演奏会や、研究発表会、それからパイプオルガンの授業もあります。

― 音楽専用ホールですよね、生音での演奏のみでしょうか。一般利用のお客様は土日の利用が多いですか。

畠山  生音以外は授業で使用することもありますが、外部のお客様にはクラシック音楽の利用のみです。主に土日が多く、平日の夜公演のご希望もありますが、午後に授業が入っていると貸し出しはできません。

― まずは大学内の使用が優先ということですね。ホールは40年の歴史がありますが、それを感じることはありますか。

畠山  古楽ファンのお客様がたくさんいらして、古楽の演奏会が多いです。ホールで所有している楽器を使用して開催することもあります。楽器の管理には気をつけています。調律や保守点検を依頼する仕事もしていますが、点検の種類も多く、理解するまで大変でした。ホールでは年間でメンテナンスのスケジュールを管理しています。普段、楽器を使用している先生方に、その楽器の状態や気になったことをメモに残していただくようお願いしていて、その内容を調律師さんに伝えるようにしていますが、温度や湿度で変わってくるので難しいです。

― 季節に左右されますね。調律師さんにお任せするしかない。

畠山  調律師さんのアドバイスをよく聞くようにしています。置き場所の温度・湿度や、来年は何の部品を換えたらいいかとか。生き物を育てていると思えば愛着がわいてきます(笑)。



■ホールの職員として大切にしていること・実現したいこと・目標にしていること
― 一般利用の主催者様はその日限りのことが多いと思いますが、何か意識していることはありますか。

畠山  事前に打合せをさせていただくので、密に連絡を取ることや、ご希望を汲むように心掛けています。ホール側からハンドリングする部分も重要だと思いますが、ご利用してくださる方々の個性を出せるように気をつけています。細かなご要望や演出などに沿っていけるように。

― それは利用者様には嬉しいことでしょうね。そのように考え、寄り添ってくれるホールは決して多くはないので。一般利用の公演は年間で何回くらいありますか。

畠山  年間、学内の演奏会を合わせて80公演、一般利用で40公演前後でしょうか。秋は混雑するので忙しくなります。

― 一般利用が平均して月3、4回、それくらいの間隔だと何とか集中できるかもしれませんね。一つひとつの公演をできる限り理解してサポートしたい、気持ちよく使っていただきたいと。丁寧に受けとめるのは疲れませんか。

畠山  はい、本当に疲れます。利用者様によってその熱の温度が違いますけど、それを投げられたらなるべく受け止めたいと思っています。

― 目標にしていることはありますか。

畠山  言いやすい人になりたいです。希望を言いやすい、ダメもとでも言ってみよう、聞いてみようと思われるようにしたいと思います。もちろんダメと言うこともありますけど。

― ダメな時は躊躇なく言ってくれそうですね。借りる側としてはその方がありがたいと思います。

畠山  ダメな時はダメ、でも背景を考えて判断します。演奏会にいらっしゃるお客様のことを第一に考えます。私が動くだけで実現するならいいけれど、他のスタッフに迷惑がかかることはやめようということも判断材料ですね。万一、断ったとしても怒られないと思っています。曖昧にする方が心証悪いのではないでしょうか。

― そう思います。

畠山  それから、ホールの大先輩にこの業界で必要な素質を教えてもらいました。まず第1にセンスがいい、2番目に機転が効く、3番目に要領がいい、4番目に気配りができる、その4つが出来ていればこの業界で何とかやっていけると言われて、それを出来るようにしていくのが今の目標です。

― ぼんやりとした、数字で表せないことばかりですね。何かを磨けばいいということでもない。でも全部繋がっていて、わかる気がします。

畠山  柔軟な対応とか、バランス感覚とか、そういったものでしょうか。繋がっていますよね、私もこれを聞いたとき、わかるなと思いました。でも自分ではダメだ、すごく大変なことだと思って、目につくところに書いているのですが、それが出来ている気が全然しないです。

― そうなりたいと願う人が、目指すものなのかもしれませんね。

畠山  長くクラシック業界で活躍されている方を見ていると、センスいいな、要領いいなと思うことが多々ありますので、そういったことなのかな。



■プライベートなこと
― 休日はどのように過ごされていますか。

畠山  イベントに行くことが多いです。観客になるのも好きなので。特に新しいイベントが好きです。新しい役者さんとか、新しいイベントや取り組み、若い人とか。それから企画として面白そうなもの。大道芸なども見に行きます。今は歌舞伎鑑賞にはまっています。あまり家にはいないですね。

― 歌舞伎の魅力は?

畠山  2年前に先輩に連れて行ってもらって、夢中になりました。色彩と、音楽と、 物語や台詞も面白いです。客席と作る舞台のライブ感、衣装や幕の鮮やかな色彩も大好きです。イヤホンガイドをつけて。

― 音楽は形がないですが、画廊の受付をしてみたいとも仰ってました。形のある芸術もお好きですか。

畠山  形のあるものも好きです。絵を描いたりするのも好きなので。

― 手作りも拝見しています。欲しいものは作ってみる、と。

畠山  無駄なものを作っているんです、何でも作ってみようかなと。簡単にペンで描けるとか、描くことが好きです。そして今年の目標は、美術品を買ってみたいと思っています。美術館でイヤホンガイドを聞くと、その作品の時代の音楽が流れていたりして、勉強になりますね。

― お琴を弾かれますよね、ずっと習っていたのですか。

畠山  お琴は中高の部活からです。その時の先生に今でも習っているのですが、先生のご主人が偶然上野学園の先生でした。ご縁に驚いています。

― 子供の頃の夢はありますか。

畠山  私の最古の資料だと、幼稚園の頃で「ねずみ」なんです。理由はわからないのですが、書いてある。記録が残っています。その次の夢は「赤毛のアン」でした。ミュージカルで、あれになりたいと思ったみたいです。ステージに立ちたいとか衣装が着たいのではなくて、赤毛のアンになりたいと。理由はわかりませんが、自然の中ですごく自由で楽しそうだったということでしょうか。イキイキとした役でしたので印象的だったのかもしれません。

― そういうことでしたら、実現できているようにお見受けします。

畠山  そのあとは特に何もないです。大学時代も、社会人になって会社員になるだろうと思っていました。アルバイトを始めてからも一般の会社を受けて、初日に「何か違う!」と思って辞退したこともありました。違うと感じたのは仕事内容ではないですが、それ以外に何か思う部分があったのだと思います。でもまさか、今のこの仕事がこんなに続くとは予想していませんでした。

― ある意味ではまだ発展途上の業種だから、自由な部分は多いのかもしれませんね。自分の裁量でやれるという部分もある。畠山さんに合っていると思います。

畠山  自在度が高いですよね。自由に仕事したいという気持ちはあまりないですけど、自在にできる今の仕事はやりやすいですし、工夫のしがいがあります。ホールのカラーを出すという難しさはありますが。でもその中で考えていくことは、第一にお客様ということだと思っています。

― 憧れている人や目標にしている人はいますか。

畠山  今まで、その時々の会場にいる人全てが勉強になっているので、誰というのは特にありません。出会う皆さんを参考にしています。洋子さんのことも、すごく見ています(笑)。こういう風に対応するのかって。状況を良く見てらっしゃる。いつも笑顔ですよね。

― 人前では(笑)・・・ありがとうございます。見られているとなると、次回から緊張します。


― お仕事の宣伝をお願いします。

畠山  はい、コンサートのチラシを持って来ました。静岡出身の戸﨑廣乃先生も出演されます。

― これは盛りだくさんの興味深いプログラムですね。チラシを掲載させていただきます。本日は長時間ありがとうございました。



教員と学生のコラボレーションによるコンサート・シリーズⅣ
弾けるイタリア・バロック~極彩色のヴィルトゥオーゾ~
2015年4月5日(日)15:00開演(14:30開場)

喜びと悲しみ、華麗な技があふれる17世紀イタリア・バロックの豊かな色どり、その光と影を存分に堪能できる、楽しいトーク付コンサートです。

太田光子(リコーダー/上野学園大学非常勤講師)
浅井 愛(リコーダー/上野学園中学・高等学校非常勤講師)
大塚照道(リコーダー/上野学園大学音楽学部演奏家コース2年) 
坪田一子(ヴィオラ・ダ・ガンバ/上野学園中学・高等学校非常勤講師)
戸﨑廣乃(チェンバロ/上野学園大学非常勤講師)
中村文栄(オルガン/上野学園大学助教)



■畠山すみれ (はたけやま すみれ)
東京都出身。跡見学園女子大学マネジメント学部卒業。洗足音楽大学邦楽研究所に所属する傍ら、王子ホールにてレセプショニストを経験。その後、2010年にリニューアルした上野学園石橋メモリアルホールに勤務。現在に至る。


※1 井坂仁志氏。有限会社アートリンクス代表取締役社長。元石橋メモリアルホール副館長。
※2 石橋メモリアルホールは1974年開館・2007年9月閉館し、2010年5月にリニューアルオープンした。


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